たたき台として作成。勢いに任せて考えたので、かなりキラーパスだと思います。
……いや、キラーサーブ?
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ある~ひ♪ もりの~なか♪ くまさ~んに♪ であ~った♪
童謡の「森のくまさん」とは、熊と少女のやりとりを描いた歌である。
……そして今この場では、歌の冒頭とまったく同じ状態になっている。
「マジかー……」
少女と呼ぶにはわずかに遅いような、現代日本においては高校生くらいの女性は呟いた。
……ここはまさに森の中。童謡の明るい雰囲気とは異なり、薄暗くて鬱蒼(うっそう)としている。
ある日、森の中。
そう、彼女の前方には「いる」のだ。「熊」が。
熊は猛獣として有名である。
現代においても、その驚異を完全に廃することはできず、
毎年、片手で数えられるほどではあるが「犠牲者」が発生しているという。
そして今ここにいる女性は、特別な訓練を受けているわけではない。
よって、襲われたらひとたまりもないのだ。死を覚悟しなければならないだろう。
……だが。
問題なのは、そこではない。
いや、厳密にいえば熊がいることは驚異である。
驚異ではあるのだが、正確に表すとそんなことは些事に過ぎない。
何故なら、彼女の目の前に熊がいるからだ。
「逃げるのと遺書書くの、どっちにすればいいかなー……、あはは」
……違う。
彼女の目の前に「熊たち」がいるからだ。
なんと、見える範囲では五匹ほどが列を作り、彼女の目の前に並んでいる。
列は途中で木々に隠れて見えなくなっているが、もしこの列が先までずっと続いていたら……。
「………………」
彼女は考えた。
まず仮に「逃げる」場合。
森の中なので足場が悪く、うまく走れないことが予想される。
すなわち、なにか工夫をしなければ「追いつかれる」のだ。
次に「遺書を書く」場合。
……無論、達成できたところでなんの意味もない。
しかもこの状況で文字を書くなど、逃げるより難しいだろう。
まず紙とペンを取り出すだけで「ゲームオーバー」だ。
しかし、そんな彼女の頭の中に、何者かの声が響く。
――力が欲しいか。
「……っ!! だ、だれ!?」
――力が欲しいか。
「あ、これ漫画でありがちなやつだ! 欲しいです!」
――よろしい。ならば力をくれてやろう。
なんて僥倖(ぎょうこう)だろう。
きっと神様が手を差し伸べてくれたんだ……、彼女はそう思った。
そして次の瞬間。
………………。
……「熊」がみるみる内に「大きくなった」。
およそ身長が倍くらいになっただろうか。それも一匹や二匹ではない。
全部だ。
全部の熊が巨大になったのである。
「なんでよ!!!!」
「おかしいでしょ! 普通ここは私に超能力とか武器とかくれるんじゃないの!?」
私は神? に向かって叫んだ。
――これだから人間という種族は。この星の覇者であり、自分が世界の中心であることが当たり前のように考えている。
何で? 私の何が間違っているって言うの? 何で私が熊に殺されなくちゃいけないの?
この状況をなんとかしなきゃいけないのに、具体的な方法なんて何も思いつかなくて、そんな疑問ばかりが溢れてくる。
――力が欲しいか。
「今度は何!?」
先ほどとは違う声が聞こえる。
――力が、欲しいか。
「また熊を大きくしたりするんじゃないでしょうね!?」
――我は汝の味方なり。もう一度問う。力が欲しいか。
「ええい! もう何でもいいから私を助けて!」
――宜しい。汝に戦う術を授けよう。
(なんか、北風と太陽みたいだな……)
そんなどうでもいいことを考えていると、一瞬の発光の後、私の手にはずしりと重いソレが握られていた。